ADHD(注意欠陥・多動性障害)の特徴と子供への接し方。ADHDかどうかのセルフチェック
どんなに言い聞かせても落ち着きがなくじっとしていられない、いつもそわそわしていて気が散りやすい、思いのままに行動してしまう・・・
まだ幼い子供にはありがちなことのようではありますが、周りの子と比べても、それが度を過ぎていたり、何を言っても効果がなかったりするのならそれはADHDかもしれません。
突然ADHDだと言われても受け入れがたくて、なんでうちの子だけが・・・と悩んだり、親である自分のせい?と自分を責めたりしてしまうでしょう。
でも、ADHDは病気なので、正しい知識を持って、周囲の助けを借りて、そして、何よりもお母さん、お父さんからの子供を見る優しい目が必要です。
ADHDとは
ADHDとは、注意欠陥多動症と呼ばれる発達障害の一つです。
ADHDの子は、知的には大きな問題はないのですが、自分の感情のコントロールが苦手。はたから見ると良識ある行動ができない、トラブルメーカーだと思われてしまうような言動を繰り返してしまいます。
ADHDの症状の特徴は3つ。
- 多動性
- 不注意
- 衝動性
多動性
イスに長いこと座っていることが難しくて、授業中に教室を歩き回ったり外に出てしまったりすることがあったり、目移りが激しく一つの遊びを続けてすることができなかったりします。おしゃべりを我慢することもなかなかできません。
不注意
「静かにしてください」「見てください」などの指示をしても、意味は理解できるのにその通りにできなかったり、ケアレスミスを連発したり、片付けができずにものをよくなくしてしまうこともあります。机の中やロッカーの中がおもちゃ箱をひっくり返したみたいにいつもものがあふれ出していることが多いです。
衝動性
急に感情をむきだしにして暴れまわったり、順番を守れなかったり、友達に手を出してしまったりします。
症状は子供によって様々で、特に不注意が著しい、多動がひどいなど、一つのことが際立っていることもありますし、色々な症状が合わさっている場合もあります。
また、ADHDは、女の子よりも男の子の方が発症する可能性が高いことが分かっています。多くの場合、7歳までの幼児期にその診断がされることが多いです。
ADHDかどうかのテスト
しばしばADHDのような症状が見られるようであれば、簡単に診断することができるセルフチェックテストを活用してみましょう。
「人の話を集中して聞けない」「物事を順序立てて行うことができない」などADHDに見られる困難な行動にいくつ当てはまるかをチェックするものです。
セルフチェック
- じっとしているのが苦手で落ち着きがない
- 人の話を集中して聞くことができない
- 順番が待てずに割り込んでしまう
- 忘れ物が多く、物をよくなくしてしまう
- 遊んでいるときにケガをすることが多い
- 時と場所をわきまえずにしゃべりつづけてしまう
- 宿題や課題を最後までやりとおすことができない
- 授業中に座っていられず、歩き回ってしまう
- 集団行動が苦手で、友だちがあまりできない
- かんしゃくを起こしやすい
- 友だちにちょっかいを出したり、邪魔したりする
- 物事を順序だてて行うことができない
- 相手の話を最後まで聞かずに答えてしまうことが多い
- 大切な約束やスケジュールを忘れてしまうことがときどきある
- 静かに行動することが苦手で「静かにするように」と注意されることが多い
15個ある項目のうち、8個以上にチェックが入ると、ADHDの可能性があることを指摘されます。
あくまで目安となるものなので、これでADHDであるとの絶対的な判断にはならないので、この結果だけでこの子はADHDなんだ・・・と決めつけるのはまだ早いです。
でも、可能性があると診断されたのなら、専門の医師に相談を受けることをおすすめします。病気には、その症状を改善させるための専門的な正しい治療が必要なんです。
医師に相談するにあたって、受診の時に提示する参考資料として、朝起きられるかどうか、学校に行くのは好きかどうかなど、いくつかの項目で、日常生活を正常に送れているかどうかをチェックできるテストもありますよ。
誰に相談すればいいの?
もし、我が子がADHDの可能性ありと結果がで出たら、迷わず専門の先生に相談してみましょう。
専門の先生はヒアリングや行動の様子をテストして、総合的に判断して診断します。そして、定期的にカウンセリングをしたり、薬を処方したりと、症状が改善するように手当をしてくれます。
セルフチェックでADHDの可能性が指摘されても、お母さんがなかなかそのことを認めたくない気持ちも分かりますが、、それは子供にとってもお母さん自身にとっても良くありません。
ADHDを治すには正しい知識や治療が必要なんです。
お母さんが、だれにもその事実を打ち明けられずに密かに戦っているのは、あまりにもつらいです。抱え込みすぎてお母さんが心を病んでしまうことだってあるので、一人で悩むのはやめてください。
また、幼稚園や学校の先生など自分の子と関わることが多い人にも相談しましょう。毎日の生活の中で、密に関わるすべての大人がその子の状況をしっかりと理解してあげることから治療は始まるからです。
周りの目を気にして、自分の子が発達障害であることを隠し続けようとするお母さんも多いのですが、ADHDは病気ですから、症状を改善させていくには、正しい知識をもって関わっていかなければなりません。
小学生にもなれば、子供にとっては、起きている時間のほとんどは学校生活がメインですよね。
何も知らない先生たちが、言うことが聞けないトラブルメーカーだと決めつけて、どうしてできないの!ちゃんとやりなさい!などの頭ごなしの否定的な指導をしていたとしたらどうでしょう。
それは、ADHDの子供にとって良いことは何一つないんです。ネガティブな感情だけが育ち、自分の殻に閉じこもってしまうかもしれません。
一言にADHDと言っても、10人いれば10通りの症状があります。病院の先生と家庭、家庭と学校の先生がそれぞれ連携してその子にあった対応をしていく必要があります。病気に限らずいえることですが、子育ては誰か一人の手にゆだねられているものではありません。みんなで一丸となって、子供が大きく成長できるように支援していくものですよね。ADHDだから・・・ではなくて、それはどんな子供にも必要なことなんですよ。
また、直接かかわりが無くても、ADHDの子を持つお母さん同士の集まりの場もありますから、同じ悩みを共有できる場で相談してみるのもよいですよ。同じ境遇だからこそお互いに心を許して打ち明けられるので、お母さんにとっても子育てに疲れ切っている心がほっと癒される場になるかもしれません。
ADHDは遺伝する?
ADHDは先天的な脳の働きの障害です。親のしつけや愛情不足が原因だと思われがちですが、実際にははっきりとした原因はまだ分かっていません。
一方で、遺伝的な要因の可能性がないともいいきれないですし、また、家族が同じ生活環境にあることから同じような症状が出やすいという家族性に要因があるという研究も進められているところです。まだまだ未知の病気ともいえるのです。
とはいえ、お母さんはできるのに自分の子はできないとか、他の兄弟には見られないのにその子だけにADHDの傾向があるというのもよくある話。できる側からすると、なぜできないのかを理解することができず、できないことに関してひたすらにやらせようとすることも少なくありません。
苦手なことをなんとかして克服することができるように無理強いしてしまうのです。でも、ADHDは本人の意識とは関係なく、できないことがある病気です。我慢強く自分の気持ちを抑えることがどうしてもできないし、自分の中では注意しているつもりでも抜けていることが多い・・・
本当はできるようになりたいと思っているのです。でも、その気持ちとは裏腹にいつまでたってもできるようにならず、本人は自信をどんどんなくしていってしまいます。
どんな子供に対しても、できないことをクローズアップすることはよくありません。そうではなく、できることをやらせて「できるんだ」という実感を持たせてあげてください。ADHDの子は、自分の興味のあることや好きなことにはある程度集中することができます。
本当にしてほしいことは違うかもしれないけど、ADHDの子は、そういうことから集中力を鍛えていったり、やり遂げたことに自信を持ったりすることができます。もちろん、好きなようにやらせるのではなく、その中で守らなければいけないルールなどはしっかり教えてあげてくださいね。できないことに挑戦させるより、遠回りのように思えるかもしれませんが、実はこれが一番の近道だったりするのです。
先天的なものだからとか、遺伝性があるからできるようにならないと思い込まないでください。
周りの子を見渡して嘆くよりもその子自身に目を向けて、あせらずにゆっくりとできることから始めていけばいいのです。
ADHDの子供にはどう接したらいい?
ADHDは発達障害の一つ、病気です。しかし、いまだにはっきりとした原因が分からないし、鼻風邪や腹痛みたいに薬を飲めばすぐに改善するというものでもありません。
それだけに、長く付き合っていく覚悟がお母さんには必要です。どんな場所においてもまったく落ち着きがない、礼儀をわきまえず思ったことを支離滅裂に口に出す、友達とすぐにトラブルを起こすなど、あっちこっちで問題を起こし、それに振り回されるのは本当に大変です。
寄り添ってあげたいと思っていても、時には放り投げたいと思ってしまうことがあるかもしれません。また、そうなってしまった原因を、育て方や愛情不足のせいだと自分を責めてしまうこともあるでしょう。
そのようなお母さんのネガティブな思考は必ず子供に伝わります。
子供はお母さんの気持ちを敏感に感じ取るものです。大好きなお母さんを自分が悩ませていると知った時、子供はどんな風に思うでしょう。
お母さんのことを喜ばせてあげたい、お母さんに褒められたい、どんな子だってそう思っているんです。
でも、できなくてお母さんを悲しませてばかりの自分に、どうせダメなんだと自己否定するようになり、中には「できなくてごめんね。」と言葉を発する子すらいるのです。
どうか、できないことばかりを見て悲観的にならないでください。できないながらも頑張っているところを見つけてあげましょう。そして、たくさん褒めてあげましょう。
全部の片付けができなくても、ランドセルだけでも決まった場所にしまえたらそれでいい、30分続けられなくても、10分机に向かって宿題ができたらそれでいいのです。
もっとこうしてほしいというお母さんの希望は押し殺して、ちょっとだけでもできたことを褒めてあげましょう。
なんでもかんでも「いいよいいよ」と甘やかすのとはもちろん違います。自信を持たせてあげられるように、自分を好きになってもらえるように、まずは褒めてあげることが大切なんです。
もし、できないことがあったり間違ってしまったときには、失敗をつつくのではなく、なんでできなかったのか子供の目線で考えてあげてください。そして、次はこうしてみようと具体的に教えてあげましょう。
「これはダメ」というダメ出しは、症状を悪化しかねません。本人は何がダメなのか分からないので、自分の存在そのものがダメなんだと受け取ります。次へのステップは、心の安心感なんです。
失敗しても前を見てくれる存在、失敗しても自分を嫌いにならない存在、それがお母さんなんです。
また、できない状況をあらかじめ作らないことも大切です。例えば、勉強するときには集中を妨げるようなものを近くに置かないことや、机は部屋の角に壁に向けて置くこと、また指導は口ではなく目で見て分かるように示すようにすることなど、お母さんの働きかけ一つでできるようになることがたくさんあります。
昨日できたことが今日はできないかもしれません。今日できるようになったことが明日はもう忘れているかもしれません。それでも根気強く付き合っていきましょう。寄り添ってあげることで子供は安心し、改善へのステップに進むことができるのです。
ADHDまとめ
ADHDは病気です。自分の子供が他の子と違うと悩みを抱え込むのはよくありません。決して親のせいでなる病気ではありませんから、恥ずかしがることなく周囲にサポートを頼み、正しい知識を持って接しましょう。どうしてこうなってしまったのか、ではなく、病気と付き合いながらも子供が自信をもって歩んでいけるよう、ありのままを愛してあげてくださいね。
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